30 September

〈源荘の面々〉・・・夏休みの風景・Ⅱ

もう秋なのにまだ夏休みの源荘の面々。

やっと長い夏が終わる・・・。(遅筆。)






<もしも源荘が平安時代にあったら。
時代考証むちゃくちゃ。捏造。光=頼光・メンバー全員にバレ済み>





燦燦と夏の日差しが降りてくるが、
それを漉しとるような瑞々しい青葉が湯船の
天上を覆っていた。

光は衝立の向こうで恥かしそうに周りを見渡し
サラシをはずし、湯帷子に着替えると
すでに両足を湯船にいれて待っていた卜部のもとへ
しずしずと歩いて行った。
いつもはすっぽりと烏帽子に隠れているゆたかな黒髪が
白い湯帷子の肩にかかり・・
ういういしい乙女の馨が漂っていた。

湯船のそばに膝を折ってたたずむと
卜部が湯桶で豊かな光の黒髪に湯をかけていった。
しっとりと濡れた髪は緑の陽光とよく似合っていた。
「頼光・・いえ・・光様はほんとうに美しい御髪ですね。」
「そうかな・・卜部のほうがきれいだとおもうが。」
ぴったりと湯帷子が肌にくっつくとふたりのまろやかな
体が湯気の中に浮かびあがる。
白い手拭いでくるくると二人とも髪を桂巻にして
ゆっくりと湯船に浸かる。

小鳥のさえずりと木の葉が擦れる音・・
しずかなせせらぎの音しか聞こえない。

「ふう・・気持ちがいいなあ。」
光はおもいっきり手足をのばした。
「都にいると、やれ、この日は忌む日だから湯あみは
よくないとかきまりごとが多くて。
私は身ぎれいなほうが好きなのだかな。」
「あら、陰陽寮の私にそのようなことを言って!」
卜部は微笑みながら言った。
「すまん、悪い意味ではないのだ。」
「わかっておりますよ、
身をきよめることは気持ちよいですもの。私も大好きよ。」
「私たちを含め多くの民は全てにおいて不安なことだらけだ。
祟りだ穢れだと、そんな中において指針を示してくれる場所が陰陽寮だ。」
「ご理解頂きましてありがとうございますわ。
光様、今日はかたくるしいお話は抜きですわ。
ところで、光様、最近一層美しくおなりで、
どなたか想う方でもいらっしゃるの?」
「ば、はかな!」
「まさか、綱殿とか。」
「なんで綱なんだ?!」




二人でこうやって過ごしているとまるで仲のよい姉妹のようだ。
光は臣下の枠をこえてなおも彼らが大切な仲間に思えた。





そのころ、




「いてて!綱公!キツイぞ。少し緩めろよ。」
「ダメだ!」
「もう半時以上こんな恰好であちこちがイテエ!もしものとき
こんなんじゃ大将を守れないぞ~!」
「・・・それもそうだな・・。」
綱は少し緩めようと縄に手をかけた・・・・その時。




「なにやってるんだ?綱??」湯上がりに顔を染め、
洗い髪が艶っぽい光と卜部が部屋に戻ってきた。

丁度、綱が貞光の縄の結び目に手をかけていたところだった。
「綱が貞光を縛りあげていたんだ。」と金太郎。



「えっ、やだ、綱、貞光、そういう趣味があったんだ。」




「ち、違う!違います!光様!」
二人はかたくなに首をふった。
「まあ、人の趣味ですもの、どうこう言うつもりはございませんわ。」
卜部は特に気にするふうでもなく、さらりと言った。
「ち、ちがうぞ!卜部ちゃん!誤解だ!」
「まあ、仲良くやってくれたら、それでいいけど。」
光は根っからの平和主義者なのである。

二人はなんだか誤解がとけないモヤモヤ感に
さいなまれていた。



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夕食の時間になった。
客はこの5人だけらしい。

開け放った広間には涼しく山の風が入ってきた。
膳には山の恵みが沢山のっかっていた。
「あの、酒呑がここまでつくるのか?」
「あやしいなあ、毒とかもっていたらどうしょう、
おい、金太郎、お前の野生のカンでかぎ分けて
食えるかどうか確かめてみろ。」
「クンクン・・・・うまそうだなあ、多分ダイジョウブだよ。
うまそうだもん。」
「なんだ、その当てにならない答は!」


「さあさあ、一杯いかがです?うちの自家製酒「神酒」ですわ。」
・・・と荊木が皆に盃をくばる。

「うっ!」
目の前に
妖しい液体の入った瓶子がおかれた。

「おれ、子供だから飲めねーぞ。山葡萄のジュースがいいや。」
「あ、俺ものめませーん。」
「なんだ貞光、折角、荊木が用意してくれた酒だぞ。
私も飲めないがほんの少しなら大丈夫だ、荊木。」
「頼光様、本気ですか?」綱は隻眼を鋭くさせて見つめた。
「主君にあやしげなものを飲ませるわけにはいかん!
私がお毒見いたします。荊木、もらうぞ!」
「まあ、疑り深いお方。でも、それでこそ忠臣の鑑。」
荊木は袖を色っぽくおさえ綱の盃に「神酒」をつぎはじめた。
盃には透明な液体が入っていた。この時代に透明な酒など珍しい。

「・・・・ぷはぁっ!なんだこりゃ?
・・・・・・・・・・・火がつきそうなくらいきつい酒だ!」
「アルコール度数45度、蒸留酒ですわ。」
 荊木は 袖を手に当てて答えた。
「こんなもん作って、なにを企んでる?」
「よさないか、綱。」

「あら、素敵。」卜部は手酌で継ぎすこしずつ口に含んだ。
・・・・ほろ酔いの様子。
「この、鮎の塩辛とよくあいますわ。美味しいv。
私がこの銘酒に名前を差し上げますわ、“赤い風塵“とか。」
「意味がわからん。」と綱。

「それにしても、蒸留とは?」
「鉄を精製した時の火力を用いました。普通の醸造酒を蒸気にして、
 冷やしますと、このような酒ができます。」
「なるほど、火力の再利用か。」貞光は感心した。
「僅かしかできないのですが、これをブランド化しようと。」
「それはいい。」やっぱり光は平和主義者であった。

「荊木殿、最近、また羅城門で鬼がでる騒動があるようだが、
 なにか、おかしなコト企ててはいまいか?」
 綱は隻眼をきらりとさせた。
「羅城門?」
「ああ・・また、鬼がでるとか・・マスコミがさわいでいるんだが。」
 光も疑問を払しょくするつもりで聞いてみた。

「もしかして・・コレですか?」
荊木が一枚の広告紙をだした。
それはここ・・「イバラギ荘」のオープンチラシであった。

「私も・・とめたんですがね、元手下のものたちが
羅城門の柱にべたべた貼ってるところを検非違使にみつかって広告物禁止だと
もめているところを街の民に鬼だと勘違いされたみたいなことを聞きました。」
床に手をついて荊木が誤った。
「お騒がせしてもうしわけございません。」

「いや・・それならいいんだ。こんどは気を付けてくれ。」
「もちろんでございます。」


鬼騒動があんまりにもあっけない結末だったので
正直なところ拍子抜けした5人であった。



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<----赤鬼の間--->

「なんつ~~か・・センスが無い名前だな・・この部屋。」
「よいではありませんか。」

「卜部ちゃん!大将!俺と川の字で寝ようぜ!俺真ん中・・」
 ・・・と言うか言わないうちに貞光の背後で
綱が「ゴゴゴゴゴゴ・・」という擬音とともに仁王立ちしていた・・。

「貞光は綱と仲良しだもん。二人で寝たら?」と光。
「げ~~!!なんでそういうカップリングになるんだよ大将!
同人だってお取扱いしないぞ!」
「ドウジン??」(マジよくわからない光)
「・・・あ、あの・・そういう話はカタギの方には・・。」
なぜかうっすら嬉しそうな卜部であった。
「とにかく、光様と私は几帳と衝立の向こうで休みますから。」

「枕投げしようぜ!」と金太郎。
「ガキだな。」
「て、いうか、普段から一緒の家に皆すんでいるのに、
なんだか、新鮮感があるな。こういうのも楽しい・・・」
と光が言うといきなり枕が飛んできた。
「うわっ!」華麗なフットワークでかわす光。
(木の箱枕だからあたると危険。)

「おのれ!主君に向かってなんてことを!」怒りの綱。
「当たらないようにするんだ!オレルールの枕投げ。」

「そうか。それは鍛練にもなっていいな!」
光はにっこり笑って箱枕を金太郎に投げつけた。

------------------直球ストレート・・・

「うわっつううう・・なんのっ!」
箱枕をキャッチ!今度は貞光に投げつける。
「こら!やめろ!」
といいつつ三回転してキャッチ。
すかさず・・全力で綱になげつける・・が・・
ひょいと几帳をあげた卜部ちゃんが前に!

「卜部殿!」
「綱殿!」

とっさのところを綱がこぶしで枕を叩き落す・・・。

バキッ!!


「あーあ・・・壊した・・・。」


「なんの騒ぎだ?おめえら静かにしろよ!
・・・・・・・・・あーっ!壊しやがった!」

気が付くと・・・酒呑と荊木が立っていた。

「都から出てきて避暑にきて浮かれるのはよろしいですが・・
・・・・これでは・・雅な都人の風情がだいなしですわ。」
荊木がくすくすと笑った。

「すまん。つい・・。」
大きな綱が背を丸めていかにも困り果てたようにあやまった。

「・・・・・・・興奮してお休みになれないようですね。
私たちも一仕事おえました。どうです?ご一緒に一杯いかがです?」

「わあっ!賛成です!!」卜部は喜んだ。
「卜部殿・・・。」(・・・意外と酒豪なんだな。)






風の通る縁側でささやかな酒宴となった。
夜の山の空気はもう早くも初秋の匂いを漂わせていた。

ひと騒動したのと涼しいので金太郎は縁側で大の字になって
爆睡していた。

「綺麗なおねー様・・も一杯っ!」
「まあ・・貞光殿、もうおやめになったほうがいいと思いますけど。」
・・そう言いながら荊木は貞光の杯になみなみとついでいた。
「卜部殿・・」
「おいしいわ・・普段はこんなに飲めないもの。・・・・・綱殿!
ちょっと・・きいてよ・・あの・・陰陽寮の上司wwww!」
「そうかそうか・・。」
綱&卜部はいつのまにかヨッパライの愚痴談議になっていた。


「鎮西には帰らないのか?」光はそっと酒呑に聞いてみた。
酒呑は悪い目つきをさらに険悪そうな目つきにしながら
「・・・いずれは帰りたい。荊木が帰りたがっているしな。
でも・・むこうではイワンがしっかりみんなを束ねているようだし。
おれは別の意味で都に勝利してから帰ろうと思う。」
優秀な地方豪族でみなに慕われていたという酒呑・・。
その片鱗を光はうっすら見たような気がした。


<鬼・・・の顔は誰でももっているんだけど。
それを人は普段かくして暮らしている。
何のきっかけに鬼の素顔が出るのか・・人はわからない・・私もだ。>




いつのまにか全員で朝まで・・・・・・・雑魚寝をしていた。






-------------------そして・・帰路についた。


「ア~~~~頭いてえ~~~!」
「飲み過ぎだ!バカ貞光!!」

あれほど飲んでクダもまいていた卜部は何事もなかったように
光の馬に横座りしていた。
「楽しかったですわ!頼光様。vv」
「そうだな。私も楽しかった。」

「うっぷ・・・馬はきついな。」
綱は二日酔いの青い顔をしていたが、
光と卜部の馬を守ることに必死だった。


陽炎が揺れる山道のむこうから旅の猿楽一座が歩いてくるのが見えた。
のぼりや派手な衣装。

光は目を凝らしてその一座を凝視した。


一座とすれ違う。


<・・・・>

だがそこにいたのは見たことが無い地方のしがない一座だった。


「頼光様・・・とうしました?」
「・・・・ん?・・い・・いや・・なんでもない。」


この山道をぬけると都へのみちはもうすぐだ!!!





・・・・そこで・・大事なことに気が付いた。














「父上にお土産を忘れた・・・。」







<終わり>