08 January

東京万歳楽家の静かな年越し(万受・小説)

今頃「年越しネタ」って・・・何(-.-)・・。

ミスで消えてしまった分を再アップします。



※登場キャラについては同カテゴリ{小説:東京万歳楽家}「東京万歳楽家の夏」の
はじめをご参照ください。(万・頼・犬・松・老)

東京編のゲストキャラを捏造設定して構成したパラレルSS小説。






年の瀬・・。

静かに年がゆく・・。
宵の口を過ぎ、特別の「午前」への時に移行する。

年を取らない彼らにとって年越しもなにも深い意味を持たないだろう。

高級タワーマンション最上階・人には見えない謎フロアの
ただっぴろい真ん中にでんと1m四方くらいのこたつ。
そして何故か小型だけど4Kテレビがあった。
こたつでは老人・松虫・頼光がすやすや居眠りをしている。

ほんの2時間前には年末恒例のあの歌番組を3人で観ていた。
老人は目を細めながら「知らんものが多い。」と呟いた。
頼光は久々に現世の歌を聞いていたが、正直あまり知らなかった。
松虫はとにかく目まぐるしい鮮やかな画面をボーゼンと観ていた。
この3人の中でテレビを知らないのは松虫だけ。
ラジオも一般の家庭にあったかどうか?な時代しか知らないのに
いきなり4KTVとの出会いである。
画面の向こうには見たことない世界が広がっていた。
手が届きそうなところに人がいる、物凄く不思議だ。



やがて・・こたつの心地よさにさすがに目があけてられなくなり
3人でこくりこくりうつらうつら始めた・・・・。

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万歳楽は・・・・そのころ。


最上階よりもさらに高い屋上・・。

風に吹かれながら街と宙を観ていた。
もう幾年自分は年の暮れを経験してきただろう。
目まぐるしく夜景が変わっていった20~21世紀。
きらびやかな電光の森の下の暗闇にいくつもの人生が満ちている。
それらは刹那輝き、やがて儚く消えて行く。
数えきれずその無情感を味わってきた・・・。
こうして儚く空しい「人の世」を見守り続けるのが
本性の彼は静かに空と地の間に身を置くのが好きだった。

そして、気が遠くなりそうな昔からいくつも過ごしてきて再び巡ってきた
歳の瀬を思っていた。


「そうだ、お前も俺も齢(よわい)はない。」

背後から白い大きな犬が現れた。

「・・・・。」
万歳楽は振り向きもしなかった。
大きな犬はブルッと身震いして、伸びをする。
「ゴミためみたいな街だが、こうして夜になると覆い隠されてまあマシに
みえるな。」

万歳楽はこの白い大きな犬があのメンバーの中では自分に一番近いのではと
思っている。
老人は元人間だし、頼光はれっきとした現世を生きる人間だ。
元「式」の松虫はか弱い精霊だ。
その中で白犬は自分と同等の力と品格の高い精霊なのだ。

白犬は万歳楽に度重なるセクハラ発言ばかりで、自らの品格を貶めている。
しかし、風にそよぐ白い毛並みはオーラを発すると昔から変わらない神々しい
白銀になった。

「お前もこの街の流れを見てきた地霊だったな。」万歳楽はぽつりと言った。
白い犬は「ああ、そうだ。」と言った。
「お前が西の都から流れてくる前からな。」
白い犬は武蔵野とよばれる以前から存在した。
海に近い広大な湿地帯。
葦がそよぐ人家もまばらだった東国の地。
戦国が続いてやがて太平の世となると、東国は江戸となり人口がふえた。
その間にも大火や自然災害が江戸を襲ったが、
その度に何度も起き上がってまた街をつくっていった。
その後は「帝都」となり、二度にわたる壊滅的なことをくぐり抜け今に至る。
夏草の如く高層建築物が短期間で地から生い出でた。
白犬はそれをどう思って見つめてきたのだろう。
彼が時おり見せる人への憎悪もわからないではない。

ーそのわりには人的な欲望は人以上に濃いんだがなあ。ー

「お前は都の精霊、俺はこの地に住み続ける精霊。ま、これからも仲良くやろうぜ。」

白犬は黒い鼻を万歳楽のうなじにつけてきた。
彼がよくやる仕草なので、構わないようにしたが、やはり気持ちいいものではない。

「・・・・。」
 万歳楽は無言でふいっと避けた。
「相変わらずつれないやつだ。俺はお前をこんなに愛しているのにな。」
「別にお前に気に入られなくてもいい。」
「そういうツンとした態度が逆にそそるんだ。たまらんな。」
「人の欲望の中にまみれてお前もだいぶ変わったな。」
「そうか?俺は昔からきままにこうやって過ごしてきたつもりだが。」

万歳楽は遠い昔・・
この地が「江戸」として沢山の人々が住み着く前・・戦国の終わりのころを
思い出していた。


------------万歳楽は旅の僧の姿に身をかえて東国まで行脚してきた。
深く被った笠の下、
普通の人々の目には彼が目立たぬごく普通の旅の僧にしか
見えなかった。


-----------------夕刻の光の中・・
岩の上に白い毛並みを黄金色に映しとった気高い精霊を見た。

「お前が来たということはここが”新たな都”になるのだな。」
牙をむきだしにらみつけ万歳楽を威嚇した。
「人は嫌いだ。」
天に向かってそう吼えると葦の野を駆け抜けていった。


あの時初めてみた姿が忘れられない。
         なんと美しい白き精霊だろう・・と。
深く被った笠を上げていつまでも白犬が駆け抜けていった野を見つめていた。




だが・・・今は・・・・今は・・・。こういう表現しかできなかった。
<非常に「残念」な奴だ。>と。


「俺もお前も変わらないよ・・”今”も”昔”も・・。・・そういう時間軸は
俺達にはないんだ。それを幸なのかどうかを感じる感覚もない。
人の世はグルグル勝手にかわればいい。俺はこの地に”いる”だけだ。
そのために俺は"存在"するのだ。」
そんな万歳楽の心を見透かして白犬が言った。



「・・・・・そうだな・・。」
ふっと万歳楽は安堵に近い気持ちを覚えた。
(・・・・なんだかんだ言ってるが、こいつはぶれないで”自分”を保っている。)




------------------遠くで冬の花火があがった。・・・年があけた。

「新年こそお前を(アッチの意味で)食うから覚悟しておけ!!」
「やっぱりお前は残念な奴だ!」

人には見えないが、
高層の屋上で白い獣と黒衣の青年の精霊が”都”の新年をひっそり(?)観ていた。


<終わり>




※渋谷白犬と万歳楽は「旧知の仲」のような気がする。
初対面ではないのでは?と思わせる「第十九幕:渋谷」の二人のやりとり。
この「第十九幕:渋谷」はよく見ると奇妙な話です。
全体辻褄があってるようなそうでないような・・。
この件については別の時に語りたいです。

冒頭の4kテレビ・・・・お伽・東京編は2000年代なんだが・・(?_?)。


ーーー余談ーーー
昔、江戸東京博物館へ初めて行ったときのこと。
東京の歴史をみて「関東大震災」「大空襲」のコーナーを
見学したのち一番上の階のカフェの窓から、歴史を忘れたかのように

によきにょき伸びてるビル群を見た時、ものすごく不思議な気がした。

のちに「お伽草子(東京編)」と出会い「ああ・・これか・・」と感じました。