11 November

東京万歳楽家、ポッキーゲーム!?

 


11/11・・ポッキーの日・・SS書いてみた。↓



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 SSについて

※登場キャラについては同カテゴリ
{小説:東京万歳楽家}
「東京万歳楽家の夏」のはじめをご参照くだ
さい。(万・頼・犬・松・老)

東京編のゲストキャラを捏造設定して構成
したパラレルSS小説。






松虫は手に二枚の硬貨を持って眺めていた。




帯に挟んだ小さな巾着には、おはじき、
ビー玉、赤い漆塗りの櫛、小鳥が刺繍され
たハンカチ、みんな人の世で育てられた時
にもらったもの。・・・・松虫の宝物。

そして公園老人からいつかもらった100円玉が
2つそこに加えられた。それを巾着から出して
眺めていた。

老人は金銭面での極端な甘やかしはない。
みんなの必要な時だけ必要な分を出してはく
れるが。しかし・・その硬貨は「欲しいもの
があったら人の世で買い物をしてみるがよい。」
と、松虫に渡したものだ。


松虫は、時々老人と外にでるけど、あまりの
街の変わりように驚いていた。人々は松虫が
生きていた昭和の初めとは違う、みたことな
いカラフルな「洋装」をしているし、店頭に
は松虫がみたことないものが沢山溢れている。
--------でも、それらを決して「欲しい」とは
思ったことはない。

帯の中の巾着にずっと入れていた濃い緑色の
ビー玉と透明なガラスのおはじきに可愛いハ
ンカチと櫛、これが松虫の宝物だし・・・。
なによりも・・・一番大切で大好きなのは
「万歳楽といる時」だ。そっと寄り添ってる
だけで幸せだった。十分それで満足している
から他にはなにも欲しいものはなかった。
勿論、可愛がってくれる老人や頼光、見てい
るだけで「面白い」白犬も大好きだ。でもみ
んなと万歳楽にたいしての「大好き」の種類
がちがう。なんて説明したらいいんだろう?

万歳楽もいつも物言わないけど心から自分を
いとおしんでくれてるのが分かる。自分のた
めに新しい浴衣や振り袖を取り揃えてくれる。
街を歩く同じ年ごろの少女たちがまとう「奇
妙で鮮やかな洋装」より、万歳楽が自分のた
めに誂えてくれる着物のほうが断然いい。
こんな風にいっぱい大好きをあたえてくれる
のに、自分はなにも出来ない。
老人がくれた2つの硬貨、これでなにか御礼
が出来ないか、童女はふぅっとため息をつい
ていた。

頼光が松虫のビー玉を手にした。
「わ・・なつかしいね。ちょっと見せて!
それにしてもこんなに綺麗な緑色の玉はみた
ことがないよ。」最上階不思議マンションフ
ロアの窓ガラスから差し込む光にかざしてみ
た。夏の深山を思わせる緑色だった。「昭和
の初めってこんな素敵なものがあったのか。」
きらきらした透明なおはじきも手にしてみた。
「妹も・・もっていたなあ。でもあの子はこ
れで遊ぶより、スポーツとか活動的なことが
好きで得意だったな。」松虫は頼光をじっと
見上げていた。「君はこういうので遊んでい
たのだね。」頼光は松虫をみるたび21世紀の
少女にはない「古き日本の大和なでしこ」の
面影を感じていた。どこか近づきがたいよう
な清らかな奥ゆかしさ。もしもこの子が成長
する普通の女の子だったらきっと他と比べよ
うもないしとやかな美女になるかもしれない。
<美女に成長した松虫と美しい万歳楽ならば
最強のカップルではないか!!>
----しかし、この子は永遠に童女のままだ。
頼光は何故かちょっとホッとした。


そんな松虫が心を見透かしたように、真黒な
大きな瞳でじっと自分を見上げている。

ドキッとした。

しかし・・・なにか・・・別のもの言いたげ
な様子だ・・。松虫が頼光のジャケットの裾
をひっぱり、階下を指さした。どうやら自分
を外に連れ出してほしいということだった。
松虫は自分から外に行きたいということはない。
なにか彼女の考えがあってのことだろう。

「外に行きたいのかい?」松虫はこくりと
頷いた。「何故?」松虫は手にした100円玉
を2枚指さした。「買い物?・・・なにかほ
しいものあるのかい?」松虫は返答に困って
もじもじとしていた。

「小娘は万歳楽に贈り物がしたいらしいぞ。」
いつのまにかフロアの日だまりのところで
澁谷白犬が臥せってあくびをしながらめんど
くさそうに答え、さらに続けた。「俺なら
万歳楽を十分満足させてやる自信があるがな。
(アッチの意味で)一気に昇天させてやるわ
い。
ま、小娘には無理だろうな。フン。」
「?」な松虫。
「き、君!女の子の前でなんということを
言うんだ!!」頼光はあたふたした。


----------頼光は思いがけなく松虫と出かけるこ
とになった。万歳楽は今は「都を見守る精霊」
のお仕事中で不在だ。

200円で買えそうなものか・・・・・・・
現代では相当至難の業だ。

松虫は老人と歩く時は人に見えない姿なのに、
今は人間に見える姿で頼光と歩いていた。

松虫が近くのコンビニを指さした。
「え?あそこへ行くのかい?」
頼光は現世に戻れば日常的な場所だが、松虫
にとってそこは未知の世界だった。
いつか老人が「あれは今でいうところの街の
雑貨屋だよ。なんでもある。」と言っていた
のを思い出したからだ。

自動ドアがあいて<ピンポーン>というチャ
イム。松虫はびっくりしたように頼光にしが
みつく。「いらっしゃいま・・・・」
レジカウンターの中年店長がいぶかしげに
二人を見る。

そりゃそうだ・・。

寒風ふく11月に、浴衣姿の小学生低学年位の
少女をつれた若い男である。しかも少女は
他人から見たらおびえたような表情をして
いる。-----それは・・・初めての場所だから
いろいろ驚いているだけなのに。

「こども110番」という張り紙がこれほど
頼光の目にイタイと思ったことはなかった。
まるで針のムシロだ。うっかり通報でもされ
たら失踪中になってる自分は確実にアウトで
ある。
そんな頼光の精神的ピンチをよそに松虫は迷
っていた。みんな鮮やかで見たことないパッ
ケージにはいったそれは何がはいっているの
か見当もつかなかったからだ。「菓子」とい
うと和菓子の類とか駄菓子の類しか知らなか
った。洋菓子はあることにはあったがめった
に口にできないものだった。駄菓子と言って
も今のようにパッケージには入っていない。
飴やかりんとうがガラスの瓶にはいっていて
それを一つ一つ買い求める時代だった。
 レジの前、目につきやすい棚に「11月11日
はポッキーの日!」
という目立つPOPとたく
さん並べられてるその商品が見えた。頼光は
ひらめいたように「これはどうだい?」と指
さした。ビターなチョコレート味なら彼にも
あうだろう・・。それに・・・はやく、この
場を脱出したかった!(これが一番の本音。)
松虫はじっと見ていたが納得したように一つ
とるとレジに持って行った。宝物のように
掌中に握りしめていた硬貨を二つ渡す。

「ありがとうございました~。」
頼光は堂々とふるまうことで店長の不審感は
うっすら溶けたような・・気もするが、それ
でも「もう二度と松虫と二人っきりでは外に
出ないようにしよう!」と思ったのであった。

松虫は大切そうにポッキーの箱を抱えていた。




「松虫!」

帰ってみると、万歳楽が戻っていた。
松虫がいないのを気にかけていたようだ。
「心配させてすまない。」頼光は間に入った。


「いや~うとうと居眠りしていたから、嬢ち
ゃんが出ていったの気が付かんかったよ。」
老人はすっとぼけたように言った。
「オレは小娘のことなどどうでもいいわい。」
白犬はやっぱり伏せながらめんどくさそうに
答えていた。<みんな・・この子が贈り物を
買いに出かけたことを知っていながら知らな
い風にしているんだな・・。>頼光はその場
の空気を読んだ。

松虫は菓子の箱をそっと万歳楽に渡した。

「この子は自分の小遣いの中から君に贈り物
したくて出かけたんだよ。」頼光は簡潔に説
明した。それを聞くと万歳楽は黙って松虫を
軽くきゅっと抱きしめた。

「お、小娘、気が利くな!・・・万歳楽、俺
とポッキーゲームをしようぜ。いや・・そん
なまどろっこしいことめんどくさいな・・・。
俺はお前を直接食いたいぞ! (アッチの意
味で)」と・・白犬。

(「ポッキーゲーム」ってなあに??)
・・と松虫は万歳楽を見上げた。
「犬!松虫に変なこと教えるな!emoji

「嬢ちゃん、いい買い物をしたね。」老人は
優しく言った。松虫は老人にありがとうの握
手をした。いつものメンバーのやりとりを聞
きながら・・・・頼光は遠い昔・・妹が自分
のために必死で焼いてくれたチョコレートの
クッキーを思い出した。それは・・苦くて全
然美味しくなかったけど・・彼女のたくさん
の自分への思いが籠っていた。

・・・また・・ほんのちょっと・・ちくりと
・・頼光は胸が痛んだ・・。



しかし・・しかし・・・しかし・・・、

その一方で・・
(・・・ポッキーゲームかぁ・・私も万歳楽
とやってみたい・・な。)
とも思う頼光であった・・・・・・。


              <おわり>