30 March

平安万歳楽家の【とっても甘い】ひととき

※ 平安万歳楽家といいつつ、現代混入の超
いい加減な時代設定。
           無責任パラレルSS



今回は万歳楽受なし。頼光兄ちゃんお休み。
     ごく微量で万×松。






洛中のカフェ「KB−c」

今や都の女子に大人気、イケメン検非違使
カフェである。





   その一角。

「ごめん遅くなって。都なんて初めてだから
さ、迷っちゃったよ」
クズメがミニ丈着物の裾を直しながら座った。
テーブルには荊木と松虫が待っていた。
「・・私もたまにしか都にこないけどね。
松虫はいいねぇ都の中に住んでるじゃない。」
と荊木。「・・・。」(でも仕事が忙しくて
あんまり出歩けない。)クズメは常陸の国から、
荊木は鎮西から新しい地方ビジネスの
ためお互いに都に上ってきていたのであった。

 検非違使のコスチュームを着たスタッフの
若者が、注文を聞きにきた。
「私は生ハムのベーグルサンドにブレンド
濃いめで。」とクズメ。「私はガレットに
ミルクティーを。」と荊木。「・・・。」
(メガ特盛り抹茶パフェ2つと普通サイズの
桜白玉パフェ1つ)・・と、松虫はメニュー
を指さした。「ち、ちょっと、アンタそん
なに食べられるの?無理でしょ。何?メガ
特盛りダブルって!」とクズメが慌てる。
「・・・・。」(今日は護衛に阿吽連れてき
てるの。晴明様が街歩くならと護衛つけて
くれた。あの二人は抹茶パフェが好き。)
 見ると、外のオープンカフェ席に大男
武人2人がデンと座っているではないか。
抹茶パフェを心待ちにしている気配が店内
までじわじわ伝わってきた。
「あの晴明殿もアンタにはめっぽう甘いね
え。まるで箱入り娘だよ。私が都に出るのに、
酒呑様なんて全然心配もしてないよ。」
荊木は微笑ましく言った。
「はあ~~~~、松虫も荊木も仕えてる゛主゛
がいいじゃない、こういっちゃ悪いが、まあ
両方とも超がつくほど”変人”だけど。アタシ
なんて土蜘蛛族長だろ、責任だけは重大でさ、
そして・・そして・・男運も超最悪ぅ~~。」
クズメは肘をついてため息した。
「ああ、星熊ね、あいつどうしてる?クズ
メにしつこかった奴。」
「いまはアタシの下で、常陸の国地域ブラ
ンド土蜘蛛ロゴのグッズ拵えてるよ。あの
ころ子分だったやつらと共にね・・。
昔は荊木んとこの酒呑とつるんでろくなこ
としてなかったけどさ。
 でもアイツの考えた土蜘蛛ブランドの
グッズ、センス悪いのよね中二臭くって。
・・いつの時代のヤンキーかってウンザ
リするわ。でも意外とそのバカバカしさ
で売れてるから不思議だわ・・。
だけど、それでいい気になってアタシに
時々ちょっかいかけてくることもあって、
その度に霞ヶ浦までぶっ飛ばしてやるの!」
「晴明殿に会わなかったら酒吞様だって
人望厚いリーダーだったのよ。まあ、もと
もと酒呑様は相当な変人だったけどね、
あれからさらに変人がパワーアップした
感じかな。もっとも晴明様は変人を越え
てるけどね。お面のセンスも変だし。」
ちらっと松虫を見る荊木。
「・・・。」(晴明様は全宇宙一正しいの!)
松虫はもごもごと桜白玉をほおばっていた。
「アンタ、全然反省してないわね。」と
呆れる荊木。

 オープン席の阿吽にもメガ特盛り抹茶
パフェが運ばれた。バケツサイズの器に
これでもか、と盛った抹茶アイスにこって
り注がれた抹茶ソース、粒あんとホールサ
イズの抹茶ケーキと抹茶ババロア、その頂
点には京都限定抹茶味ポッキーが剣山のよう
に刺してあった。 二人は恍惚した至福の
不気味な笑みをたたえパフェをまったりと味
わっていた。

「そうかあ、クズメには幸せになってもらい
たいわね。」荊木が優しそうなまなざしを手
元のティーカップに落とした。「一度本気で
惚れた男がいて告白したのよ、アンタの子な
ら産んでもいいって。」クズメはちょっと
遠くを見つめるように言う。「うわっストレ
ートすぎ!ていうか、肉食的。情熱的って
いうか。」
「あ、松虫にはまだ刺激強かった?」
「大丈夫、この子見た目は童女だけど中身は
不明だから。」と荊木。
「・・・・・。」(主と共に主上に仕えて
10代目分よ。)指で10を示す。
「ひょっとしてこの子アタシらより年上か
い?」クズメは驚いた。
「・・・・・。」(なんか意見ある?)
松虫は無表情でほっぺたに桜あんと生クリ
ームをつけていた。
「惚れた男の子どもかあ。いい遺伝子残した
らそいつを飽きてポイかもしれないけどね。」
クズメは強気に言い放ち、生ハムがたっぷり
層をなしてるベーグルサンドにかぶりつく。
・・・なんとなく雌猫系の猛獣を連想させた。

emojiきゃーっサダミツさーんemoji。」

    女の子の甲高い声がきこえた。
「はいおまち。お嬢さん、特製ほうじ茶ラテ
に都を守る検非違使の正義とLOVEを注入!」
振り返ると貞光がウェイターをしているでは
ないか!
別のテーブルでは女の子たちが貞光に熱い
視線を贈っていた。
「げっ!優性遺伝子男!」クズメはむせた。
「え?あれなの?アンタが告白した男って。」
「・・・。」(あーあれね。あれはダメよ、
ウチの卜部にもいい顔してるし。残念なこと
にチャラいわよ。)

  貞光がこっちに気がついた。
「あれっ?これはこれは珍しい御一同様で。
いらっしゃいませ~。」
「久しぶりだね、貞光。」
「これは荊木の姐さん、いつぞや貴女に鎖鎌
巻かれた足が今だにうずきますよ。
・・・罪な女(ひと)だ・・。」テーブルに
片手をつき、耽美そうなポーズ決めて荊木に
言った。「・・・・。」(・・あいかわらず
口が達者ね。二刀流の検非違使さん。
どうでもいいけど、ご自分の大将なんとか
しなさいよ、源兄妹揃って晴明様(万歳楽様)に
妙なお熱あげてんじゃないわよ、まったく!)
「いやぁ~~松虫ちゃんもあいかわらず毒舌
さえてるね、無口なのに。・・・おんや?
そっちのお嬢さんはたしか・・・?」
クズメはさっきの勢いとは裏腹に、突然現
れた貞光に真っ赤になり俯いていた。
「ていうかあなた、なにやってんの?カフェ
でバイト?検非違使は本当の職業じゃなかっ
たの?」と荊木。
「俺さあ~、実は二人分稼がないと生活苦
しくて。今バイトも兼用してんのよ。公務
員でも下級すぎるからバイトはOKなわけ。」
ふうっまいったというように両手をあげた。
「え?二人分?」クズメは思わず身を乗り出
した。「あ、君、土蜘蛛のクズメちゃんじゃ
ない?うわっ久しぶりだね~。何?俺に会い
にきたの?」
「そんなんじゃないわよ。第一アンタなんか
アタシを振ったじゃない!!それにもういい
人ができて結婚したんでしょ。」ぷいっと横
を向く。「え?けっこん?・・てなんじゃそ
りゃ??」「だって二人分て・・・・・。」
「あーあれね。・・あれッ・・・・て!!!
こらぁ~~~~金太郎!!店には来るなって
言っただろ!お前がきたら営業妨害になるん
だよ!」 オープンカフェのテーブルには
阿と吽の間にちょこんと子供が座って特製メ
ガ盛りチョコレートパフェを無心でがふがふ
食らっていた。阿・金太郎・吽が凄い勢いで
メガ盛りのパフェを食らってる姿はあまりに
圧巻すぎていつのまにか見物の人だかりが出
来ていた。「なぁんだ金太郎のことか。」荊
木はクスッと笑った。「誰だい?あの子。」
とクズメ。「彼は弟みたいなもんだって言っ
てたわ。」「じゃ、二人分ていうのは・・。」
クズメは理解納得した。「お、お客様、あと、
5分で30分になります。」
スタッフの一人がおそるおそる尋ねていた。
「ここのメガ特盛りパフェを30分以内で完食
したら料金タダになるんだ。・・・・金太郎
はこれまで3回挑戦して3回ともパーフェクト。
あんな底なし食いが来てみろ店は大損害だ!」
貞光は本気で頭を抱えていた。
「・・・・。」(阿吽も28分と54秒で完食し
たみたいね。)松虫はストップウォッチを
何処からか取り出した。金太郎が完食する
とウヮーっという喚声と拍手が響く。
「おっちゃんたちもやるなあ。」金太郎は
阿吽と勝利の握手をかわす。いつのまにか
ともに戦いを制した者どうしの和やかなム
ードのよう。「貞光ぅ、今日のおやつはもう
いらないから~~。」ニコニコ無邪気に手を
ふる金太郎。悪気があったわけではなく
彼の頭の中でオヤツ代を浮かせたつもりなん
だろう・・。「なんなんだよ~~!勝手に
3人で勝者の世界つくってやがる!うわあ~
3人同時に完食なんて大損害だ~~~。」
「・・貞光くん、あの子が食べた分は君の
バイト代から引いとくよ。君がこのカフェ
でNo.1人気でも、身内が挑戦者でさすがに
4回目はダメでしょ。」店長が背後でそっと
伝えた。うなだれる貞光のそばで、金太郎が
満足そうにお腹をさすっていた。
気の毒とは思いつつも、可笑しさがこみあげ
てきてクズメと荊木は声を殺して笑っていた。
「・・・・。」(阿吽は今回、初挑戦だから
大丈夫・・と。)松虫は無表情で伝票をチェ
ックしていた。


店を出る三人・・。
「はあ~楽しかったよ。今日はありがとう。」
「クズメ、族長が重たくなって愚痴りたくな
ったらいつでも連絡して。」
「・・・。」(あ、チャラ男と食欲魔王。)
松虫が視線を向けた。

振り返ると貞光と金太郎がいた。
「貞光がこれを。」金太郎が紙の束をクズ
メに渡した。・・・みるとカフェの割引券
だった。「なんだいこれ?」
「へへへ・・また来いよ。サービスするぜ。」
「優待券ならともかく、割引券とは商売うま
いね。全然艶っぽくない!」
・・でもクズメは笑った。「まあ・・また
都に来たら使わせてもらうよ。」と荊木。
「まいどあり~!クズメちゃんに検非違使の
正義とLOVE注入!」
「ばっか~!恥ずかしいこというんじゃな
いよ!」クズメと荊木が手を振って松虫と
別れた。
二人の女が都の雑踏に消えてゆく・・。



 2人とわかれたのち、松虫は阿吽とともに
洛中を行く・・。童女ひとりなら人さらいの
危険性があるが、屈強な武人二人付きである。
・・・というか通行人は屈強そうな武人と無
表情な童女にぎょっとしてむしろ避けていく。


---------------辻の一角・・。
広場に人だかりがあった。

「さあさ!わが猿楽一座の出し物もこれが
最後だよ~~!!都の皆様へ福を呼び込む
祝福の舞、ぜひぜひお心遣いをはずんで
くだされ。  一座の花形舞人、万歳楽!」

座長の声もと、白い衣のい舞人が現れた。
わあああという歓声ののち、ぴたりと静か
になる。辻芸人の素朴な楽の音が流れる、
しかし、それを補うように舞は艶やかだ
った。皆がうっとりと見惚れていた・・。

人だかりが激しくて小さな松虫には全然
見えない・・すると阿吽の一人が松虫に
手を伸ばし、抱き上げるとひょいと肩車
した。

広場の真ん中で白い花が舞っている・・
いや、あれは・・・わが主・・。
遠くて人込みでよく見えないけど・・。
松虫は主と日々ともに過ごしてはいるが、
こんな風に大道で見ることは滅多にない。
宮中で貴族の前で舞う舞ではなく、庶民の
中で見せる祝福の舞。
   <でも・・綺麗・・。>
松虫は大きな瞳をさらに大きくして見ていた。

 万歳楽が松虫に気づいたかどうかはわから
ない。自分は阿吽に肩車されてようやっと見
えるくらいだから。
それにこれだけの人の波・・無理無理。

万雷の歓声ののち、主の短い舞は終わった・・。




-----------屋敷に戻る・・と、
奥の部屋で、晴明が文机に向かい書を書いて
いた。

松虫は主の不可解な時間差行動に慣れている
ので、別段驚きはしない。
街に行かせてもらった御礼のため、主のそば
へ進んだ。「戻ったか松虫。」翁の声で振り
向きもせず言った。

「・・・・。」(楽しかったです。ありがと
うございました。)
松虫は三つ指をついて深々と頭をさげた。
「松虫・・・我が舞はどうであった?」

<・・・・あ・・気が付いていたんだ。>

なぜだかとっても嬉しかった。そしてこう気
持ちを伝えた。
「・・・。」
(辻であろうと宮であろうと、万歳楽様の舞
は変わりなく”花”がございます。)

晴明は松虫に答えなかった。
・・・・しかしその背中にとても満足してい
るのを感じた。

<そうよね、アタシもだてに晴明様につかえ
て、主上が十代目分の時間じゃないんだから!>

松虫はそのまま下がっていつもの通り、部屋の
外で静かに控えた。

阿吽はたくさん甘味を味わい眠気が生じた
のかこくりこくりと縁側で幸せそうな居眠
りをしている。
蔀戸からは夕刻が近いことを告げる、優し
い淡香色の光が差し込んできた。

今日はいつもとは少し違う素敵なひとときを
すごすことができた。
・・・と心から感謝する松虫であった。

<おわり>


※検非違使カフェに行こうって言いだしたの
はクズメか荊木かと。

松虫は始終超極上イケメン主と一緒だから
全く興味はない。

松虫と荊木は第六幕で、通信係の仲立ちをし
ているシーンから同じ仕事をしている従者
同士で仲がいい・・という勝手なねつ造。